「メタバース」で就労支援

受刑者の就労を支援するためのプロジェクト

近年、インターネット上の仮想空間であるメタバースは、個人だけでなく企業もビジネスとして活用を始めている時代です。
自社の製品を紹介したり、就職希望の方に向けての企業説明会や人事関係の説明をメタバース上で実施する企業も増えてきました。

そんなメタバースを使ったビジネスですが、最近では受刑者の就労を支援するためのプロジェクトも始まっています。
これは、公営競技の競艇の収益金をもとにさまざまな支援活動を行っている「日本財団」の取り組みのひとつであり、受刑者と企業をメタバースの空間上で結びつけて雇用促進を図るプロジェクトになります。
対面はもちろん、近年ではオンラインのビデオ通話を利用しての企業面接は数多く行われてきましたが、メタバース空間での就職活動というのは従来の方法とはまた違うメリットがあるとして注目されています。

プロジェクトの内容

プロジェクト名は「職親プロジェクト」といい、さらなる雇用促進のために日本初の試みとして発足しました。
このプロジェクトに賛同した東京都や地方企業の計13社がメタバース空間内にそれぞれの企業ブースを設置して、全国各地の少年院や刑務所にいる在院者と受刑者がパソコンで会場に入室して気になる企業のブースに入り詳しく話を聞くというシステムです。
ブースに入ると企業の担当者が画面越しに仕事内容を話してくれるため、リアルの企業説明会と遜色のない体験が可能です。

施設の中にいてもさまざまな企業の話を聞けるのため、受刑者としても職の選択肢や幅が広がり、東京や各エリアにいながらも沖縄や北海道といった全国各地の企業とつながれるのがとても貴重な機会になります。
受刑者の中には出所後、自身が罪を犯した地域で就職することでかつての仲間と再会し、再犯に及ぶケースも少なくはありません。
メタバースで遠く離れた地域の企業を知れれば、離れた地域での就職となって再犯防止にもなるというメリットもあります。

待遇や給与といったデリケートな話も、メタバースのオンラインな空間だからこそ聞きやすい雰囲気もあり、これによって企業を具体的に把握して自身が働くイメージを持ちやすくなるのも魅力です。
受刑者と企業の隔たりや心の距離を、メタバースという空間が大きく縮めてくれるプロジェクトになっています。
何より、メタバースはオンラインであるため交通費や旅費が一切かからないのも魅力です。
メタバース空間が持つ独特な柔らかい雰囲気は、心を閉ざしがちな人も素直になれて自分を出しやすい環境であると同時に、企業としても採用コストを削減できる見込みのある期待できるプロジェクトであると言えるでしょう。